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INSIGHTSベトナム進出は、会社をつくる前に「形」を選ぶ 業務提携・合弁・現地法人の違い
ベトナム進出の形は、業務提携・合弁・100%出資の現地法人に大きく分かれます。それぞれの向き不向きと、2026年3月施行の改正投資法で変わったこと・変わらないことを整理します。
ご相談の最初に、こう聞かれることがよくあります。
「ベトナムに進出するなら、まず現地に会社をつくるべきですか」
答えは、会社をつくらずに始められる形もある、です。そして、どの形を選ぶかで、必要なお金も時間も、撤退のしやすさも大きく変わります。
ベトナム進出の形は、大きく分けて3つあります。
- 業務提携:現地の会社と契約を結び、法人はつくらない
- 合弁:現地の会社と一緒に出資して、法人をつくる
- 100%出資の現地法人:自社だけで出資して、法人をつくる
この記事では、それぞれの向き不向きと、2026年3月に施行された改正投資法で何が変わったのかを整理します。
その前に:駐在員事務所と支店
「まず駐在員事務所を置いて様子を見る」という進め方を検討される方も多いので、先に触れておきます。
駐在員事務所でできるのは、連絡、取引の橋渡し、市場調査といった活動です。営業活動、つまり売上を立てることは認められていません。市場を調べる拠点としては使えますが、売り始める段階では別の形が必要になります。
支店は、銀行や保険、フランチャイズなど一部の業種を除き、多くのサービス業では設立が認められていません。日本企業の選択肢としては、実際には限られます。
そのため、実際に事業として動かすなら、以下の3つのどれかを選ぶことになります。
1. 業務提携:会社をつくらずに始める
現地の会社と契約を結び、自社の商品やノウハウを使ってもらう形です。代表的なのは次のようなものです。
- 販売の提携:日本から商品を輸出し、現地の会社に仕入れて売ってもらう
- 製造の委託:現地の工場に、自社の仕様で作ってもらう
- フランチャイズ:自社の店舗の仕組みやブランドを使って、現地の会社に店を運営してもらう
いちばん小さく、早く始められる形です。法人をつくらないので、設立の手続きも、現地で人を雇う必要もありません。うまくいかなかったときも、契約を終えれば撤退できます。
その代わり、売り方や価格を自社で決めきれないという弱みがあります。売るのは相手の会社なので、どう並べるか、いくらで売るか、どこまで力を入れるかは、相手の判断に左右されます。結果は、パートナー選びでほぼ決まります。
フランチャイズには固有の決まりがあります。ジェトロの解説によれば、外国企業がフランチャイザーとなって現地企業にフランチャイズを与える場合、投資の手続きは不要ですが、ベトナムの商工省へのフランチャイズ登録が必要です。また、フランチャイズの対象となる事業の仕組みが、1年以上運営されている必要があります。
2. 合弁:現地の会社と一緒に法人をつくる
現地の会社と共同で出資し、新しい会社をつくる形です。
強みは、相手がすでに持っているものを使えることです。販路、仕入れ先、人脈、許認可の進め方、現地の商習慣。日本企業が一から揃えると何年もかかるものを、最初から手にできます。日本側は技術や商品、ブランドを持ち込み、現地側は売る力を持ち込む。役割が噛み合えば、どちらか一方ではできない事業になります。
一方で、合弁は「結婚」に例えられるほど、運営が難しい形でもあります。よく起きるのは次のような食い違いです。
- 利益を再投資に回したい側と、配当を早く受け取りたい側の対立
- 重要な決定をどちらが握るか(出資比率と議決の仕組み)
- うまくいかなくなったとき、どちらがどの条件で抜けるか
とくに3つ目は、始める時点では誰も考えたくないものです。しかし出口の条件は、関係が良いうちにしか決められません。合弁契約の段階で、現地の専門家を入れて詰めておくことをおすすめします。
また、業種によっては外国資本の出資比率に上限があり、そもそも現地企業と組まなければ参入できない分野もあります。その場合は、合弁が唯一の選択肢になります。
3. 100%出資の現地法人:すべてを自社で決める
自社だけで出資して、ベトナムに会社をつくる形です。
経営のすべてを自社で決められるのが最大の強みです。価格、人事、ブランドの見せ方、利益の使い道。誰かと調整する必要がありません。技術やノウハウを外に出したくない場合にも向いています。
そのぶん、負担もすべて自社で持ちます。設立の手続き、事務所、採用、会計・税務、そして売り先の開拓。現地の事情が分かる人材を確保できるかが、成否を分けます。
業種ごとの許認可にも注意が必要です。たとえば小売業の場合、ジェトロの解説では、外資企業が商品を小売するには事業ライセンスの取得が必要とされ、店舗を出すにも店舗ごとの設立許可が求められます。一定の条件を満たさない店舗には、経済的需要審査(ENT)もかかります。会社をつくれば何でも売れる、というわけではありません。
2026年3月の改正投資法で、何が変わったか
2026年3月1日、ベトナムの改正投資法(法律第143/2025/QH15号)が施行されました。投資法の改正は5年ぶりです。現地法人や合弁を検討する方に関係の深い点を挙げます。
会社の設立を先に進められるようになった
これまで外国企業は、まず投資登録証明書(IRC)を取得し、その後に企業登録証明書(ERC)を取得して会社を設立する、という順番が原則でした。この順番のために、立ち上げには平均で2〜3か月ほどかかっていたとされます。
改正法では、IRCより先にERCを申請して会社を設立することが、原則として認められました。立ち上げ期間の短縮が期待されています。
ただし、設立の時点で、その業種の外資規制などの参入条件を満たしていることが前提です。規制のある業種では、その条件を整える手続きに時間がかかり、結局は期間が縮まらない可能性も指摘されています。
許認可が必要な業種が減った
事業を始めるのに追加の許認可が必要な「条件付き事業分野」が見直され、38分野が対象から外れました。税関手続きの代行や職業紹介などが含まれます。
また一部の分野では、事前の許認可ではなく、事業開始後に審査を受ける仕組みに移ることになりました。この部分は2026年7月1日の施行とされています。
工業団地などでの手続きが簡単になった
工業団地や経済特区など特定の区域で行う事業について、手続きを大幅に簡略化する「特別投資手続」の対象が広がりました。これまでは半導体やハイテクなど一部の業種に限られていましたが、改正後は原則として業種を問わず対象になります。工場を持つ製造業にとっては、利点が大きい変更です。
変わっていないこと
一方で、外国資本にだけかかる規制、たとえば出資比率の上限などは、従来から大きく変わっていません。手続きは速くなっても、入れない業種に入れるようになったわけではない、という点は押さえておく必要があります。
また、改正法の細かな運用は、下位の政令やガイドラインで決まる部分が多く残っています。実際に手続きを進める際は、その時点の最新の運用を現地の専門家に確認してください。
どの形を選ぶか
ここまでの話を、判断の順番に並べ直します。
- 自社の業種に、外資規制や許認可がかかるかを最初に確認する。出資比率に上限がある業種なら、合弁しか選べないこともあります。ここを確認せずに形を選ぶと、後で組み直しになります。
- 「どこまで自社で決めたいか」を決める。価格やブランドの見せ方を一切譲れないなら、現地法人に向いています。売り方は現地に任せてよいなら、業務提携で十分なこともあります。
- 「どれだけの期間で、どこまで賭けるか」を決める。まだ売れるかどうか分からない段階なら、法人をつくる前に業務提携で試すのが合理的です。売れる手応えを得てから、合弁や現地法人に進む。段階を踏むほど、失敗したときの傷は小さくなります。
- 撤退の条件を、始める前に決める。どの形でも、ここを先に決めておくかどうかで、うまくいかなかったときの損失が変わります。
形は一度選んだら終わりではありません。業務提携で始めて、手応えを見て合弁に進み、最終的に自社の現地法人を持つ。多くの企業は、事業の段階に合わせて形を変えていきます。
最後に
進出の形は、会社の登記の話に見えて、実は「現地で誰と組み、どこまで任せるか」の話です。制度の比較表だけを見ても、答えは出ません。
SAKUKOグループは、ハノイで小売店舗やホテル、レストランを運営しています。販路や店舗網を持つ現地の会社と組むことが、日本企業にとってどんな選択肢になるのか。自社の商品と業種に照らして一緒に整理するところから、オンライン相談をお受けしています。
なお、合同会社ハイクア・インターナショナルは、SAKUKOグループの日本側の窓口として、ご相談の取次と調整を行っています。提携や出資に関する契約は、日本企業とSAKUKO側の法人が直接結ぶ形になります。会社設立や許認可の申請など法的な手続きは、現地の専門家にご相談ください。
参考にした資料
- 長島・大野・常松法律事務所「【2026年3月施行】ベトナム新投資法 ―投資手続の簡素化・迅速化は実現されるか」(2026年3月)
- 日本貿易振興機構「ベトナム 外国企業の会社設立手続き・必要書類」
- 日本貿易振興機構「ベトナム 外資に関する規制」
- 日本貿易振興機構「フランチャイズによって軽減されるリスク −フランチャイズビジネスの実態と制度(2)−」
- VIETJOベトナムニュース「改正投資法、条件付き事業を削減」
本記事は2026年9月時点の公開情報をもとに作成した一般的な情報であり、法的な助言ではありません。また、特定の投資や取引を勧誘するものではありません。制度の運用は変わることがあるため、実際のご判断にあたっては、最新の情報を専門家にご確認ください。